仙台高等裁判所秋田支部 昭和28年(う)97号 判決
原判決が証拠として齋藤三男の検察官に対する第二回供述調書を挙げていること、同調書は昭和二十七年十月三日作成されたものであるところ、原審第二回公判調書中証人齋藤三男の供述によれば齋藤三男は同年九月二十八日と思うが逮捕状を執行されて勾留されそのときの被疑事実は豊岩村支部結成のときの饗応の疑であり、翌十月七日か十日頃再び逮捕状を執行され、その時の被疑事実は被告人等に一万円宛贈与した事実であることが認められる。これによれば右調書作成のときは右調書に記載されている齋藤三男が被告人等に金員を供与した事実については逮捕状の請求がなかつたのであるから検察官は齋藤三男を逮捕状により勾留しその逮捕状記載の被疑事実とは異なる事実について取調をなし、右調書を作成したものといわなければならない。しかし、右調書をみると齋藤三男は任意検察官に対し供述したものであることが明らかであり、逮捕状に記載されてない事実についても被疑者が任意供述した場合検察官がこれに基いて調書を作成することは少しも違法ではなく、その調書は証拠能力を有するものと解すべきである。原判決が右調書を証拠として採用したのは適法であり、所論はいずれも理由がない。